昨年、12月22日に名護市で北部訓練場の返還記念式典が開催された。政府はヘリパッド建設を条件に北部訓練場の過半の土地の返還を進め、この過程を「沖縄の負担軽減のため」と説明してきた。しかし、ヘリパッド建設と北部訓練場の一部返還は本当に負担軽減といえるのか。
ヘリパッド建設と北部訓練場の過半の土地返還の根拠であるSACO最終報告の問題点を日米地位協定や米海兵隊の運用を踏まえて検証するとともに、沖縄の真の負担軽減がいかになされるべきか、考えたい。
つきまとう返還条件
SACOとは、1995年の少女暴行事件の後、沖縄県民の負担軽減を目的として日米両政府によって設置された委員会で、1年後に最終報告が出された。最終報告には、普天間基地を含む沖縄県内11の施設・区域返還が明記されていたが、その大半は県内移設が条件とされた。実際にも、ギンバル訓練場は金武ブルービーチ訓練場とキャンプ・ハンセンに、楚辺通信所はキャンプ・ハンセンに、読谷補助飛行場は伊江島補助飛行場に、瀬名波通信施設はトリイ通信施設に、それぞれ機能が移転されてから返還がなされた。また、北部訓練場に隣接していた安波訓練場は、「北部訓練場から海への出入りのための土地及び水域が提供された後に」返還されるものと記載され、宇嘉川河口部分の土地及び水域が提供されたことをもって返還された。
そして、北部訓練場については、①北部訓練場の残余の部分から海への出入を確保するため土地及び水域を提供すること、②へリコプター着陸帯を返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設することが一部返還の条件とされており、①は既に実施され、②も完成したとされている。
このように、SACOの最終報告に基づく施設・区域の返還は基地機能が県内へ移設された上で行われたものであり、実質的には設備の整備・更新であった。このような返還は、SACO設置の際に目的とされていた沖縄の負担軽減を実現するためのものとは考えられず、当初目的と最終報告に乖離がみられるものである。
合理的な解釈は
米軍の日本駐留は日米安保条約と日米地位協定にその根拠がある。日米地位協定2条3項は、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない」とする。地位協定に目的規定はないものの、同協定は日米安保条約に基づくものであることから、同協定の目的は、安保条約の目的、すなわち日本国の安全と極東の平和・安全の維持に寄与するため、米軍が日本の施設・区域を使用することを指すものと理解できる。
とすると、その目的のために米軍が施設・区域を使用する必要がなくなった場合には、当該施設・区域は返還しなければならないと考えるのが合理的な解釈である。
では、沖縄に存在する米軍基地面積の約7割を占める米海兵隊は、この目的のために沖縄の施設を使用する必要が本当にあるのだろうか。
(島村海利・しまむらかいと 新外交イニシアティブ研究員)
こちらの記事は、2017年1月10日に「琉球新報」に掲載されています。