米軍再編(2012年改定)で在沖海兵隊は大幅に兵力ダウンする。普天間飛行場の移設返還を日米政府が合意した20年前とは状況が大きく変わった。辺野古の海を埋めて飛行場を造るよりましな解決策はあるはずだ。
20年前の移設合意を押し付けられる沖縄はいまも「苦渋の選択」を強いられる。普天間の辺野古移転を筆頭に、県内移設を伴う基地返還は那覇軍港の浦添移設、牧港補給基地内の倉庫群を嘉手納弾薬庫とトリイ通信基地(読谷村)へ移設、北部訓練場の半分移転に伴う東村高江のヘリパッド建設などだ。それらはすべて海兵隊の関連施設なので、県議会が決議した「海兵隊撤退」を主張すれば県内移設のくびきから解放される。しかし県内にもいろんな意見がある。
辺野古阻止、普天間の県外・国外移転を訴える翁長県政を支持するが、高江問題や軍港の浦添移転はやむを得ない、と考える人も多い。この考えの矛盾点は海兵隊の一部機能は不要としつつ、同部隊の別機能は許容していることだ。普天間の県外・国外移転は海兵隊撤退と同義である。海兵隊は在沖基地の7割を占有し、撤退で多くの問題が解消するが、尖閣諸島など領土が狙われる、という脅威論が持ち上がる。その懸念は米軍再編で海兵隊はグアムなどへ分散移転し、戦闘力がおよそ5分の1に縮小していく現実を見ていない。なので杞憂(きゆう)である。
再編後の残留部隊は長崎県佐世保配備の海軍艦艇で半年以上もアジア地域へ遠征する。そこに存在しない部隊が抑止力であるはずがない。戦争となれば本国から大型輸送機で大部隊を運んでくることになっている。それが日米安保体制だ。在沖海兵隊が日本防衛の要だとはいささか大げさ過ぎる。
海兵隊はアジア遠征で各国軍隊と共同訓練を通した軍事外交に余念がない。近年は「人道支援」「災害救援」の国際共同訓練に力点を置く。自衛隊やオーストラリア軍などのほか中国軍も積極的に参加している。テロや自然災害など今日的な「脅威」にアジア諸国が共同対処する基盤づくりが重視されている。
その運用実態や米軍再編から、海兵隊の抑止力も沖縄の地理的優位も無意味であること自明である。それでも20年前に合意した県内移設に縛られる基地論議は賛否の迷路を彷徨(さまよ)う。
海兵隊の運用実態を検証すれば、基地移設でない、より合理的な解決策を見出せるはずだ。
こちらの記事は、2017年2月27日に「沖縄タイムス」に掲載されました。