日米の原発・再処理などの原子力政策を調査・研究する「ND日米原子力エネルギープロジェクト」の報告書が、10月20日、『アメリカは日本の原子力政策をどうみているか』と題し、岩波ブックレットとして発売されました(562円(税込)・発刊:岩波書店)。
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執筆者は「ND日米原子力エネルギープロジェクト」メンバーの川上資人、久保木太一、猿田佐世、平野あつき、藤塚雄大です(編・著:鈴木達治郎、猿田佐世)。ぜひお買い求めいただき、ご一読いただければ幸いです。
概要
日本はあらゆる政策についてアメリカから強い影響を受けているが、原子力政策も例外ではない。2012年、民主党政権(当時)によって模索された「2030年代原発ゼロ」の閣議決定は、アメリカから「回避せよ」との要求があった直後に見送られたことが明らかになっている。
しかし、政府高官も含めたアメリカの多くの専門家が、安全保障上の問題から、日本に対し使用目的の明確でないプルトニウムの製造、つまり再処理への強い懸念を直接間接に示していることは、日本にあまり広く伝わっていない。
私たちは、日本に届く情報に触れるとき、誰のどのような意図でその情報が私たちのもとに届けられたかに常に思いを致す必要がある。アメリカが日本の原子力政策を推進するよう圧力をかけているといわれるが、誰がどのように影響を及ぼしているのか。日本政府が推進する再処理はどう見られているか。アメリカでは原発は減少傾向と聞くが実際はどうか――
2018年に期限を迎える日米原子力協定の行方もさぐりながら、原子力問題について日米外交の観点から検証・提言する。
目次
序 章 はじめに
- 国内原発導入の経緯
- 日米原子力協定
- 現行協定締結交渉当時の国際社会の状況
- 改定交渉の開始
- 現行協定締結時の交渉
- 難航した米議会の承認手続
第二章 米国の原子力政策
- 経済性優先の米国原発政策
- 米国の原子力安全・核セキュリティ対策
- 原子力をめぐる米国政府と企業の関係
- 米国の核燃料サイクルと高レベル放射性廃棄物問題
- プルトニウム問題と核不拡散派の存在
第三章 再処理と日米関係
- 日米の基本姿勢
- 再処理・核燃料サイクルとは何か
- 諸外国の再処理の状況とプルトニウム在庫量の増大
- 米国の専門家が日本に対して再処理中止を求める理由
- 日本が再処理をやめない理由
第四章 3・11後の米国からの影響
- 福島原発事故後の米首都ワシントン
- ワシントンの対日政策コミュニティにおける原発再稼働推進
- 民主党政権「2030年代原発ゼロ」閣議決定見送り
- 日米外交チャンネルの偏り -日本に届く声と届かない声
第五章 2018年、日米原子力協定改定の見通し
- 満期の近づく日米原子力協定と満期後の選択肢
- 日米両国の立場
- 現在の見通しと今後
- 日本は米国に従属しているのか