鳥越俊太郎ND理事の基調講演の後、沖縄タイムス専任論説委員の長元朝浩氏、かりゆしグループCEOの平良朝敬氏を交え、沖縄における米軍基地問題の意味、日本全体における米軍基地問題に対する意識やその捉え方、沖縄とのギャップ等について議論をし、今後の解決策を探った。
基調講演・鳥越ND理事
日米関係や基地問題について米国から日本への情報は非常に限られたチャンネルからしか入ってこない。
アメリカの国際戦略から見て、海兵隊を沖縄に置いておく必要があるか疑問である。アメリカの国会議員や軍事関係者からも普天間や名護に海兵隊を常駐させないでいいのではないかという議論も出ている。ハワイ、グアムという線から対処できるということが言われている。しかし日本のメディアからはそういったアメリカの声が伝わってこない。
アフガニスタンやイラクなど過去のアメリカの戦闘行為を見ても、アメリカは最初に爆撃を行い空から主要な軍事基地を攻撃していく。空軍の出番である。次に出て行くのは航空母艦、戦艦である。最後にいよいよ地上での戦闘に入っていくのが海兵隊。海兵隊は最初に戦闘に入っていくわけではない。海兵隊はグアムやハワイからアジアのどこにでも展開することができる。沖縄に固執する必要はないはずなのだが、日本政府が「抑止力」だから沖縄に海兵隊が必要、と主張しているというのが現状である。アメリカに従属的な日本の姿勢を変えなければ沖縄の問題は解決しない。
辺野古移設の埋め立て承認に対する支持が県外で過半数を超えてしまった。日本全体が保守化、右傾化し、安倍政権も変わり、その中で沖縄の問題を自分たちの問題としてとらえる人が少数派になっている。安倍政権は、日本国憲法に代表される戦後体制からの脱却を掲げ、集団的自衛権の行使を容認しようとしている。安倍政権はイデオロギー色が強く、私は危機感をもっている。このような状況の中での名護市長選の勝利は感動的で歴史的なことである。失望するのではなく、まず一人一人が、違和感を感じるそれぞれの問題について、取り組むしかない。
長元朝浩氏(沖縄タイムス専任論説委員)
今「沖縄」と「日本」のメディアには温度差という言葉では表すことができない溝がある。辺野古埋め立て移設を巡る動きの中で、これまで沖縄の保守陣営の中心にいた人たちの中から、政府のやり方に反対する新しい動きが出てきている。名護市長選の結果は一条の光だったのではないか。その光を解決につなぐため、どういう取り組みをすればいいのか、それが沖縄の人に科せられた課題である。
平良朝敬氏(かりゆしグループCEO)
かりゆしグループは観光業であるが、観光は平和がないと成り立たない平和産業である。1990年以降、県内への観光入域客数は増加しているし、米軍基地が返還され、その跡地を利用した那覇市新都心や北谷町も発展している。沖縄の経済の仕組みは変わった。経済の観点からみても沖縄に基地はいらないといえる。沖縄は経済に自信を持っていい。