新外交イニシアティブ(ND)初の書籍『虚像の抑止力 沖縄・東京・ワシントン発 安全保障政策の新機軸』(旬報社)が、2014年8月に発売されました。
書店の他、amazonでもご購入いただけます。(※詳細:旬報社HP)
本書は、日米外交の多くの歪みを象徴的に表す沖縄の米軍基地問題を皮切りに、同じように「抑止力」による説明が繰り返される集団的自衛権の行使容認、そして日米安保体制や日本の民主主義の在り方について、外交・防衛・安全保障の専門的見地から疑問を投げかけ、問題の所在を解説するものです。(定価:1400円(税別))
著者:新外交イニシアティブ(ND)編
柳澤協二(ND理事/元内閣官房副長官補)、マイク・モチヅキ(ND理事/ジョージ・ワシントン大学准教授)、半田滋(東京新聞論説兼編集委員)、屋良朝博(元沖縄タイムス論説委員/フリージャーナリスト)、猿田佐世(ND事務局長/弁護士)
(以下、「はじめに」より、内容紹介)
「抑止力」で説明されてきた沖縄の米海兵隊の存在を、安全保障の観点から読み解いたのが本書である。海兵隊の軍事的な役割に鑑みるに、在沖海兵隊は本当に「抑止力」とみなせるのか。
また、「抑止力」は、その一言ですべてが説明できるかのように、多くの場面で用いられる。この7月の集団的自衛権の行使容認の閣議決定の場面でも、安倍首相は何度も「抑止力」による説明を繰り返した。このような「抑止力」の説明やその意味についても、本書では疑問を投げかけている。
防衛庁官房長を務め、小泉・安倍・福田・麻生政権において内閣官房副長官補として安全保障政策と危機管理を担当した新外交イニシアティブ(ND)理事の柳澤協二氏は、普天間基地問題の迷走が、県民にとって最優先にされるべき基地の危険性除去から「移設なければ返還なし」という政治問題にすり替えられることで起きていると指摘する。また、この膠着状態を、日本の民主主義の根幹につながる問題として捉え、問題提起を行う。
次に沖縄タイムス論説委員を務め、その後フリージャーナリストとして在沖米軍基地問題の取材を続けている屋良朝博氏は、沖縄駐留の海兵隊が実際にどのような役割を担い、運用されているかを具体的に紹介することで、抑止力言説に疑義を唱える。米国の安全保障政策が変容するなかで、事実にそくした「日米同盟のかたち」と沖縄からの海兵隊撤退の方途をさぐる。
また、東京新聞の論説兼編集委員として、長年にわたり防衛省、自衛隊の取材を続ける半田滋氏は、日本の基地政策が、米国の安全保障政策を「絶対視」するなかで成立していることを明らかにする。とりわけ沖縄はつねに日米安保体制のスケープゴートにされ続けたこと、安倍政権が進める日米同盟の強化も同様に、沖縄を「踏み台」にしたものとなっていることを指摘する。
ジョージ・ワシントン大学准教授であり、日本政治および外交政策、日米関係、東アジア安全保障を専門に研究するND理事のマイク・モチヅキ氏は、海兵隊の沖縄駐留を正当化する抑止力論について批判的な検証を行う。そのうえで東アジア地域の安全保障環境を念頭に置きながら、海兵隊の役割、普天間基地問題解決策を提起する。
以上、4氏の論考をふまえて、私が司会を担当し、座談会を行った。座談会では各氏が上記論点を出し合いつつ、沖縄基地問題を軸に、抑止力、集団的自衛権について議論を行った。なお、年末に予定されている沖縄県知事選挙が、沖縄基地問題についての大きな分かれ目となることを見据えて議論は進められた。
最後に、ワシントンにも在住し、外交・政治問題に関して米議会などで自らロビーイングを行ってきた経験を踏まえ、私から、日本外交の問題点、外交にさまざまな声を反映させる可能性と方法について、新外交イニシアティブのこの間の取り組みを紹介しながら報告する。
猿田佐世(新外交イニシアティブ事務局長・弁護士)